微力からはじまる 太子食品株式会社
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3月11日に発生した東日本大震災により、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災地の皆様、ご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。また、災害の復旧に従事されているメーカー様、卸様、小売各社の方々に対し心よりの敬意を表し、感謝申し上げ、被災地の一日も早い復興を心よりお祈りします。
日本スーパーマーケット協会では、震災の影響を受け、流通の現場では今、何が起こっているのか当事者の方々から声を聞き、お伝えすることにしました。第1回は太子食品の工藤茂雄社長に被災地の現状をお伺いします。

食品メーカーが商品を流通させたくても安定供給ができない事情

工藤社長
太子食品工業株式会社
代表取締役社長 工藤茂雄
所在地: 青森県三戸郡三戸町大字川守田字沖中68
業務内容: 和日配食品の製造・販売/各種商品の仕入れ・販売
創業: 1940年(昭和15年)10月
従業員: 750名(2010年4月期)
被災地の現状は深刻

――御社の被害はどのような状況でしょうか?
当社の製品は水をたくさん使うため、工場は山間部に多かったおかげで沿岸部のような壊滅的な被害を受けることはありませんでした。それでも工場ではガスや電気といったライフラインが断たれましたので、その影響を受け、散水ができないモヤシ500トンを廃棄する被害を受けました。このほか電力が絶えたため、冷蔵能力が断たれ、商品が傷まないうちに急いで商品を出荷したのですが、今度は小売さんの物流センター側が津波でダメージを受けており、入庫することができない。そんなわけで大切に製造した商品を棄てるわけにもいかず、避難途中の被災者2万人に豆腐など無償で配布させていただきました。

――従業員の方も被害にあわれたのですか?
はい。八戸が津波で大きな被害にあいました。当社の従業員の中にも被災された方がおられます。そのような中でも、工場では不眠不休の体制で従業員は操業を続けてくれました。おかげさまで現在は4つの工場とも何とか操業できている状態です。

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サプライチェーンは1箇所が寸断されると全体が機能しない

震災の影響は東北地方だけの問題ではない

――工場の電気はどのくらいの期間供給されなかったのですか。
4日間です。停電した時点で工場が止まったままですので、中に残っていた豆腐などの商品をすべて廃棄して、製造ラインの消毒洗浄を行い、復旧のメンテナンスに追われました。このほか地域でガソリンの供給が断たれたために、従業員が工場まで通勤できなくなり、一時ラインがストップしてしまいました。現在でも燃料確保には苦慮しているところです。
被害は食材や燃料だけではありません。仙台にある資材メーカーが地震による火災被害にあった際、全ての消防車が街全体で消火活動にあたっていたため、鎮火することができませんでした。またフィルムメーカーが津波で流されたため、包装資材も調達できなくなりました。今は残った在庫でなんとかやりくりしている状況です。
当社はこれまで必要な時に必要な量だけを引くジャストインタイムでの調達を実践し、なるべく在庫は抱えないように努力してきました。ところがサプライチェーンがズタズタに寸断されてしまいましたので、食材でも、包装資材でも、燃料でも、どこか1箇所が被害を受けるとサプライチェーンマネジメントは全体として成り立たなくなります。これは東北地方の問題だけではありません。もし日本のどこかの工場で、東北から材料を調達している企業があれば、製造ラインはストップしてしまうでしょう。
当社もなんとか別のチャネルから原料や資材の調達を試みていますが、他からの注文も殺到しているため、この点についても苦慮しています。
現地の状況
現場での生の被害状況を語る工藤社長
現地の状況
写真は道路に乗り上げた船舶

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計画停電により生産計画を組むのが難しい

食品供給には電力が必要

――今一番困っていることは何ですか。
電力供給ですね。当社の場合、幸い日光工場だけは被害もなく、稼働できていますが、こちらは計画停電の影響を受け、稼働計画を調整しながら、なんとか安定供給をめざしています。同業他社が被害にあわれた関係で、新規の小売様からお取引の希望を戴くこともあるのですが、現在の生産能力では現状を維持するのが精一杯ですので、心苦しいのですが、全部の注文には応えられないこともあります。


工藤社長
現場では被災地の最前線に立ち采配を振るった
計画停電により生産ラインが止まってしまう

計画停電は実施されたり、されなかったり、時間もまちまちなので、きちんとした生産計画を立てられません。工場では電気が止まることを前提に生産計画を組まないと大量の廃棄品を出すことにもなります。このことが従業員に負担をかけることになっています。昼間は出勤すべきか、そうでないのか、かなりの心労をかけ、夜間はフル稼働ですので、本当に申し訳なく思っています。

例えば豆腐も直ぐに製造できる訳ではありません。大豆を侵漬して、粉砕し、煮るといったプロセスがあり、連続した作業が必要なのです。これが納豆ですと更に発酵するために必要な時間を要します。これらの工程はシステムで制御されていますので、やはり電力が必要なのです。これらの食品は茨城県で地域分業といいますか、集中している訳ですが、被災地域でもありますので、同じようなご苦労をされていると思います。効率化のために今までは集中化でよかった面もありますが、サプライチェーン全体で視ると、今後は回避策を検討する必要があるかもしれません。

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未曾有の災害に社是「和」の実践でやり抜きたい

工藤社長
供給責任者としての使命について語って頂いた
社内報写真
同社の社内報の中にも決意が表れている

――小売業の方にメッセージをお願いします。
店舗でも開店してから2時間で商品が売り切れてしまい、お客様から、ちゃんと商品を製造しているのかといったお叱りを受けることもあります。今できることを不眠不休で精一杯、取り組んでいますが、ご迷惑をおかけすることもあろうかと思います。例えば包装資材が調達できない関係で、SKUを絞りこまざるえない場面も生じています。パッケージの在庫に余裕があるのは国産のアップグレード品が多いのですが、そういうことを言っている状況ではないので、出せる商品から順次出荷しています。供給責任をきちんと果たすことがメーカーとしての使命だと考えております。配送面においても、小売センターが被災したこともあって、センター納品から店舗直送へ切り替えの要請を受けています。もともと当社は東北全域にデリバリーできるネットワークを持っていましたが、センター納品に仕組みを変更した後ですので、すぐに全てのリクエストに応えるのは厳しい状況です。当社としましても、極力ご迷惑がかからないように、できる範囲でサポートさせて頂いております。また日光工場では環境に配慮してコージェネレーションを採用し、エネルギー供給を実施していますので、今後、計画停電になってもある程度は対応できるように対策を講じています。十和田工場では燃料のほかに、バイオチップによる発電も手立てしています。

――最後に消費者の方にもメッセージをお願いします。
震災により、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。現地では温かい食べ物もないですし、少しでも早く食べ物をお届けできるように頑張っています。日本人の国民性といいますか、東北の県民性かもしれませんが、皆さん律儀で節度ある行動を保っておられます。これから季節が変わり、気温が上昇してきますと体調を崩される方もいらっしゃると思いますので、お身体をご自愛されるように願っております。供給責任者としての自覚と責任を持ち、復興のために全社一丸となり、力をあわせて頑張って参ります。

(聞き手:管理渉外部 茂野)

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